百年眠別

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「最後かぁ……」  音葉は眠れなくてベッドに入ったまま独り言を零す。“リュウラジ”の事を考えていたら流藍の事まで色々思い出して来た。流藍はリュウと違って人の相談になんか乗らないし、音葉をからかったりする。リュウみたいな穏やかさは持ち合わせていない。  音葉と流藍が小学四年生だった時、音葉はランドセルに付けてたウサギのぬいぐるみキーホルダーを失くして悲しんだ事がある。 「一緒に探して、流藍」 「いやだね」 「流藍と昨日一緒に帰った時に失くしたんだよ」 「おれの所為じゃないし。音葉がドジだからだろ」  音葉は流藍の言い方にムッとしたけれど、いつもの事だからそれ程気にせず一人で帰りの通学路をゆっくり歩いて探した。結局、ウサギのぬいぐるみキーホルダーは見つからなかった。途切れた金具がランドセルに残っているのを見て音葉は余計に悲しくなった。  音葉が流藍の家を最後に訪ねたのは中学一年生の時だった。玄関チャイムを鳴らすと、出て来たのは流藍でお互いにびっくりした顔をしていた。 「……おばさんは居る?」 「いや、出掛けてるけど……」 「そう。これ、パウンドケーキ焼いたからお裾分け」 「音葉が作ったのか?」 「お母さんだよ。いつもそうじゃん」 「何だ……」  流藍がどうしてそんな事を訊くのか音葉は分からなかったが、何故かがっかりされたのはムッとした。音葉は流藍にムッとしてばかりだった。優しい態度の時の流藍は口数が少なく、流藍特有の言い方も出て来ない。そのお陰でバランスが取れ、幼馴染というふわふわした信頼関係が音葉と流藍を細く繋ぎ止めていた。
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