百年眠別

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 音葉はコールドスリープなんて自分には関係ないとずっと思っていたのに、鏡に映る自分の顔に何故か違和感を覚えるように気持ちがじわじわと塗り替えられていた。 「流藍に話し掛けてみようかな……」  心残りの解消をしよう、と音葉は思った。“リュウラジ”を知る切っ掛けをくれた隣の家の幼馴染は、まだ幼馴染という関係で居てくれているだろうか。しかし、話し掛けるにしても話題が無い。流藍の誕生日はまだまだ先だし、いきなり家を訪ねる勇気も無い。もし流藍特有の言い方を今でもされたら、ムッとするだけではなく喧嘩になるかも知れない。音葉は自室で「うーん」と考え込んでいたが、徐に窓辺に行って少し悩んでから窓を開けた。自室の窓から見える景色は子供の頃から変わっていない。夕日が隣の家の窓を照らしていて、暑い空気が室内に入って来る。音葉は十分ほど外を眺めていたが流藍の部屋の窓が都合良く開く事はなかった。流藍が気付いてくれないかな、と思っていた音葉は益々弱気になっていく。 「あ……花火大会」  窓を閉めた音葉は閃いてスマホのカレンダーを表示した。高校二年生の時に流藍と行けなかった花火大会は三日後に迫っていた。音葉が住む県では一番早い時期の花火大会ではあるが、規模は小さめで大学の友人を誘ってまで行く事はなかった。流藍が誘ってくれた時、お互いの家に行くのではなく待ち合わせをしていた。それを特別に感じていた音葉だったけれど、大雨が長時間降っていて家を出るまでもなく花火大会は当然のように中止になったのだった。
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