魔法使いの決断

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 あと一回、これで終わり……そう思っていたのに、気付けば何度も繰り返していたなんてことは、誰しも身に覚えがあるはず。  時間を操る魔法で国を救ってきた魔法使いも、その例外ではない。 ・時間を操る魔法で国を救ってきた魔法使い。しかしあと一度しか魔法が使えない中、戦争が始まって――魔法使いは決断を迫られた。  この難局を、いかにして切り抜けるか?  本作品は、その決断を描いている。 ・ゲームで負け「もう一回」を繰り返す弟。兄は勝負する代わりに、ある条件を提示して?  兄は言った。 「勝負してやってもいいけど、それには条件がある」  たかがゲームに偉そうだな、と弟は後になって思ったが、その時そんなことまで考えは及ばない。 「なんだよ、言って!」 「今から学校へ戻ろう」 「学校へ? もう放課後だよ?」 「そうだよ。だけど、こっちは放課後の学校に用があるんだ」 「何の用?」 「そこで、ちょっとした肝試しをやってもらう」 ・放課後に「あと一回」という声が聞こえたら「もう終わり」と返さなければいけない。さもないと……。  二人が通う小学校に、そんな謎の噂が広まったのは、ごく最近だ。  放課後に「あと一回」という声が聞こえたら「もう終わり」と返さなければいけない。さもないと……とんでもないことが起こる! らしいのだけれど、皆が「もう終わり」と返してしまうので、何も起こらない。  兄は、返事をしないと何が起きるのか、とても気になっていた。そこで、それを弟にやらせようと思ったのである。  弟は、その噂を聞いていたが、信じていなかった。どうせ何も起こらない。そう考えていたので、兄の要求に応じた。 「わかったよ、なんだってやるよ!」 「じゃ、今すぐ行こう!」  兄弟は放課後の学校へ到着した。二人の両手にはゲーム機の端末が握られている。ゲームの続きをやるためだ。「あと一回」という声が聞こえてくるのを、しばらく待つ。聞こえてこない。短気を起こした弟が叫ぶ。 「あと一回って、早く言えよ! こっちはゲームをやりたくてしょうがないんだ!」  わざわざ催促しなくていいだろと、兄は思った。しかし、この後に彼は塾へ行かねばならないので、早く済ませかったのも事実である。彼も叫んだ。 「こっちは忙しいんだよ! 時は金なりなんだからさあ、さっさと言って!」  二人の挑発に、何者かが反応した。男の声が聞こえてくる。 「あと一回」  弟が吠える。 「まだまだ、勝負はこれからだ!」  その時、ゲーム機の端末から機械の音声が流れた。 「エクストラステージです。このステージでは対戦する二人が協力し、侵略してくる敵を撃退してください。プレーヤーAの弟さんは時間を操る魔法が使えます。その魔法で敵の動きを止めてください。プレーヤーBのお兄さんは超強力な攻撃魔法で動きの止まった敵を破壊してください。よろしいですか? それでは、ゲームスタート!」  突然の出来事に驚いた兄弟だったが、息の合ったプレーでゲームの画面に登場した敵を全滅させることに成功する。ゲーム機の端末から機械の音声が再び流れた。 「お疲れさまでした。この国は、これで救われました」  そしてゲームのエクストラステージは終了した。何も表示されない画面を見て、二人の兄弟は顔を見合わせた。 「今の、なに?」 「さあ?」  二人は結局、何が起こったのか理解できなかった。しかし賢明なる読者ならば、お分かりのことだろう。時間を操る魔法で国を救ってきた魔法使いの仕業である。魔法使いは、異世界にいる「もう一回」を繰り返す弟と、その兄の力を借りて侵略者を撃退したのだ。  これに味を占めた魔法使いは、その後も同じ方法で国を守り続けている。
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