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それだけ言い残し、おじさんはまた「じゃ!」と手を振り去って行った。
いつのまにか好男たち以外誰も居なくなっていた山頂に嫌な沈黙が訪れる。
先に口を開いたのは、麗子の方だった。
「なーんだ! 変だと思った!」
「……え?」
「あの誠実な好男くんが私のことをATMだと思ってたり、浮気なんてするわけないよね! よく考えたら足も全然臭くないし!」
「いや……まぁ、うん」
「良かった良かった! じゃ、そろそろ下山しよっか!」
まるでさっきまでのことが嘘のように、麗子はいつもの可愛らしい麗子に戻っていた。
好男はその豹変ぶりに一瞬驚いたが、すぐに安堵が心に広がった。
良かった。これで全て元通りだ……ん?
先に歩き始めた麗子を追って帰ろうとした好男だったが、ふと足を止めた。「どうしたの?」と首を傾げる麗子に「ちょっと、先に言ってて」と伝える。麗子は「変な好男くん」と言い、そのまま下山道に入って行った。
麗子の姿が見えなくなった後、好男は再びやまびこに尋ねた。
「やまびこさん。麗子は、浮気をしていますか?」
やまびこはいつもと同じ呑気な声で、答えた。
【さっきも言ったでしょう。あなたの彼女は、彼氏一筋スーパーウルトラピュアピュアガールです。浮気の『う』の字も知りません】
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