第2章 新生活

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 翌朝、コーヒーの香りに誘われて寝ぼけ眼で1階に下りると、ジェイクが朝食を用意してくれていた。 「おはよう、ブレンダ。よく眠れた?」 「おはよう。よく眠れたわ」  前のアパートでも使っていたベッドで、しかもリリーを抱きながらだったこともあって、ぐっすり眠れた。  ジェイクはあの広いベッドにひとりで寝たんだろうか。  気になるけれど、そこを突っつくと一緒に寝たいと言われそうで、ふと浮かんだ疑問を頭の隅に追いやった。  ジェイクが用意してくれたのは、わたしの朝食だけではなかった。  鼻歌交じりにリリーのご飯も用意してくれている。    リリーのお皿には、ドライフードのほかに茹でたササミを少しトッピングしてあるではないか。 「暑くなってきて食欲が落ちているみたいだから」  ジェイクがリリーに笑いかけながらお皿をリリーの目の前に置く。  リリーはそれに飛びついて、美味しそうに食べはじめた。 「ブレンダはこっち」  ダイニングテーブルにスクランブルエッグ、トースト、サラダが盛り付けられたお皿がコトリと置かれた。 「コーヒーはミルクたっぷりだよね?」 「ええ、ありがとう」    なんて甲斐甲斐しいんだろうか。  わたしの好みもきちんと把握してくれていて、至れり尽くせりだ。    朝食まで用意してくれる男前のお金持ち――もしやわたしは、事故で頭を打ったせいでまだ眠り続けているのかもしれない。 「これは夢……?」 「まだ寝ぼけてるのか?」  笑いを含んだ声で言いながら、ジェイクが向かい側に座る。  ジェイクの作ってくれた朝食はとても美味しかった。  たいしたことはしていないと本人は謙遜したけれど、たいしたものだと思う。  わたしは料理がからっきしダメだ。  仕事が忙しいと自分自身に言い訳をして、朝はシリアルとコーヒー、昼はカフェでサンドイッチ、夜は市販のソースを使ったパスタ……という生活を送っていた。  包丁すら使わないのだからもはや料理とは言えない。  出会って3カ月で彼との結婚を決めたのは、いわゆる胃袋を掴まれたというやつなのかもしれないと思った。  
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