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「なぁハヤト、一緒についてきてくれよ。」
野々村君がまた僕にそんなことを言ってきた。なんで何もできない僕をそうやって連れ回すんだよ。それにさ。ハヤトって呼ばないで欲しいのに。
僕を下の名前でハヤトなんて呼ぶのはこいつだけだ。みんな風間君て呼ぶのに。昔からハヤトって呼ばれてるから仕方なく返事するけど。僕はこの名前が嫌いだ。名前ばっかりカッコよくて僕には合わない。はっきり言って名前負けしてる。
流されて連れて行かれた職員室で先生との打ち合わせ。クラスで決まったことを報告して、生徒たちからの要望を先生に伝える事になっている。
どうせ僕なんかついて行ったって何もしゃべれないことくらい、わかってるだろうに。どうせいつも話すのは野々村君の役だし、流石だねって先生に褒められるのも野々村君だ。
僕はひたすら隣でそれを見てるだけだし。
結局一緒に行った僕は、先生と野々村君が話し合ってる間、そばでそれを見届け、無言でウンウン頷いただけ。
何しに行ったんだかわからない。
スムーズに事が進み、僕は何の役にもたたないままただこうしてそばにいる。
まるで二人でやったことのように、手柄だけを分けてもらってるみたいで気が引ける。
全部やってるのは野々村君なんだから。手柄を横取りするつもりもないし、でしゃばって前に出る気もない。
なるべく人目につかないようにこのままひっそりと裏方に徹したい。
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