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文化祭
文化祭の当日は大盛況だった。
店頭に立つ野々村君はいるだけで人を集めたし、ホットドックは飛ぶように売れた。
冷やかしに来たうちの母さんは僕なんかよりも野々村君と話すのに忙しそうだ。
野々村君の母さんと二人で色々、他のクラスを回って歩き楽しんでたみたいだ。楽しそうにそんな話を野々村君に聞かせてる。
「あー、その格好素敵よね。一人だけイケメンが引き立ってる。」
体操着にジャージ姿の冴えない僕を見ながら母さんが野々村君にそんなことを言ってる。わかってるよ。僕はどうせ冴えない裏方だ。自分の子供が冴えなくて母さんも気の毒だよな。
野々村君が店頭に立つと冷えた飲み物もよく売れたし、イートインコーナーを作ったお陰で、人が集まり、人が人を呼んでますます賑わった。
溢れ返った教室は席に座れずテイクアウトの客で一杯になってた。
「イートインコーナー作って正解だったな。」
嬉しそうにしてる野々村君のカッコいい横顔に思わず見惚れた。
「けどそれ、よく思い付いたな、ハヤト!」
「え、別に?ただなんとなく、休めるようなそんなとこもあるといいなって思っただけだし…」
単に僕が座りたいと思っただけだ。文化祭といったら、食べ歩きもいいけど、疲れたらやっぱり座れる場所が欲しいから。
だけど、最初に俺ウエイターさんでもやろっかな、って言ったの野々村君だし。
店頭に立っての売り子なんかよりもウエイターさんのほうが野々村君には絶対に似合いそうだと思った。白いシャツに黒いベスト、手作りの蝶ネクタイがよく似合ってる。
あんなにカッコいいウエイターがいたら、誰だって座ってお茶していきたいって思うだろ。普通…。
ごみを片付けてひたすら僕は裏方に徹する。カッコいい野々村君がそんな事をしないで済むように。
だってあいつはここの顔だから。あの顔にごみ集めなんかさせちゃいけない。あいつはカッコよくオーダーをとっててくれればそれでいい。
あいつを引き立てるためにこうして自分はそばにいるんだから。
そのためにあいつに僕は選ばれたんだから…。
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