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「あのさ、これ、お前も着てみろよ」
「ん?」
差し出されたのは同じ黒いベスト。
「は?やだし」
「人手が欲しいんだ。お願い!な?一回だけ、頼むよ。な?」
いつもの奴だ。僕は彼のこの言葉に弱い。
「やだって。これ以上、僕になにやらせるんだよ。こんなに引き立ててやってるのに」
「え?なにそれ。引き立ててって?」
「何でもない」
「ほら、いいから。あっちのお客さん、注文待ってる!」
無理やりベストを押し付けられた。
「なんだよ…勝手だな。」
フランクフルトを焼くのもごみ集めもとりあえず他の子に頼んで白のワイシャツにベストを羽織った。確かに混み始めてウエイターが一人では対応しきれなくなってきてた。
「お待たせしました。」
どっかの店の黒服みたいに俺たちはフロアを二人で駆けずり回る。
飲み物とフランクフルトを売る店が、なんだかおしゃれなカフェみたいに賑やかになった。二人でフロアに立ったらなんとなく様になって飲み物の注文も一気に増えた。
「お、ついにお出ましか。いいぞツートップ!」
先生がそういって僕たち二人を茶化す。誰がお出ましだよ、誰がツートップだよ。目立つの野々村君だけだし。
そうか、引き立て役がいてこそ、メインが輝くってもんか。
そうしてあっという間に1日が過ぎていった。
二日目の明日は、今日よりも売り上げアップを狙う。
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