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舞台
『仄暗い深淵からの使者』は、ほのしん、ほのししゃ、とか略される程には話題になったフリーゲームだった。ドット絵のRPGホラーゲームで、俺も配信者になる前にやったことがあった。カラスはたしか眼球をくり抜く、忌まわしき敵モブとして出てきた記憶がある。
脇道に沢が見えて、木々の緑に映えていると思い、俺はしばらくスマホで動画を撮ることにした。朝靄はいつしか晴れて、気持ちのよい日光が差し込む。何百年も前から生えているであろう樹木の立派な幹を下から上へと撮影したとき、何か白いものが見えた。
「御札…?」
何故木の幹に貼られているのかよくわからないが、呪文のような字を這わせた紙が上の方にあった。画面を操作してズームしたが、それ以上のことはわからなかった。何かの目印か、安全祈願のようなものなのだろうか?
撮影をやめ、再び黙々と歩き始める。そろそろ3合目あたりだと思われる。腕時計を見て、ここまで予定通りであることを確認する。休憩をして、体力温存のためにバランス栄養食をとろう。
下調べした通り東屋があって、そこに荷物をどさりと置き、自分も腰掛けると肩と腕を回す。ザックからスティック状の栄養食を取り出し、頬張った。
ふと、ゲームの内容がどんなだったかが気になって、休憩がてら俺はスマホで検索することにした。
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