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あと1回の告白
「好きです! 付き合ってください!」
初めてその人に告白したのは、入学式の日。
中学から好きだったとかそんなんじゃなくて、ただ高校の入学式の日に見かけてすごくタイプな人だなと思った。ようするに初対面で告白した。
俺は昔から思ったことがすぐに口に出てしまうタイプで、「怖いもの知らずな奴」と友人からは言われていた。
「え……ご、ごめんなさい」
困惑しながら告白の返事をくれたその子を前にした俺は、友人の評価にそうかもしれないと思った。
その日、体育館に入ってあらかじめ通知が来ていた自分のクラスの列を探していたとき、隣のクラスの列にすごく艶やかな黒髪の女子がいるのが目に留まった。
傷みなんて知らないだろう黒髪は、すっと伸びた背中に寄り添っていた。椅子に届きそうなほどの髪を何年かけて伸ばしたのかは分からない。
天使の輪ができるほどツヤのある黒髪を揺らして振り返った彼女は、ぱっちりと形のいい二重の目で誰かを探しているようだった。
白い肌はなめらかそうで、頬は柔らかそうで。もしも俺が女子だったなら、彼女と友達にでもなって無遠慮にその肌を堪能したいと思うくらいにきれいだった。
すっと通った鼻筋に、小さなぷるんとした唇。きっと声や性格まできれいなんだろうなと勝手に想像して、その声に名前を呼ばれたくなった。
残念ながら、初めて聞いた彼女の言葉は「ごめんなさい」だったけれど。それでも声は可愛らしい鈴のような声だった。
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