あと1回の告白

12/15
前へ
/15ページ
次へ
「萌え袖あざとくて可愛いです! 付き合ってください!」 「あ、あざとさは狙ってないよ? 寒いだけだから!」 告白をして。 好きなものや苦手なものを聞いて。 彼女にも俺のことを教えて。 1日1回の告白にすべてを注いで。 気が付けば卒業が目前に迫って来ていて……。 俺はあと何回……振られるんだろう。 「それと、その、まだ、ごめんなさい。あと、今日は潮谷くんの好きな場所、知りたいなぁ」 「学校ですかね。磯貝さんに会えますし」 「そ、そっか……」 至極当然のことのように答えると磯貝さんの頬が赤く染まった。恥ずかしそうに髪と手で顔を隠す。 その仕草も何度も見てきた。 最初の頃は見れなかった照れ隠し。 つまりは、最初のことは俺の告白に何も感じていなかったということ。 いつからだっけな。俺の告白に彼女が恥ずかしがる素振りを見せるようになったのは。 俺のこと、意識してくれてるのかな。 彼女と過ごした昼休みの最初の5分。 その積み重ねで彼女のことをたくさん知った。 彼女も俺のことを知ってもらえた気がする。 「卒業、したくないですね。もっとこの時間が続けばいいのに」 最後まで彼女と過ごすのは昼休みの最初の5分だけだった。 一度くらい、一緒にお昼ご飯を食べてみたかったし、どこか遊びに行ったりしたかったし、勉強を教えてもらったりしたかった。 どれもこれも適わなかった3年間。それでも俺は不満があるわけじゃない。ただ俺にくれた5分間の積み重ねが嬉しい。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加