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「萌え袖あざとくて可愛いです! 付き合ってください!」
「あ、あざとさは狙ってないよ? 寒いだけだから!」
告白をして。
好きなものや苦手なものを聞いて。
彼女にも俺のことを教えて。
1日1回の告白にすべてを注いで。
気が付けば卒業が目前に迫って来ていて……。
俺はあと何回……振られるんだろう。
「それと、その、まだ、ごめんなさい。あと、今日は潮谷くんの好きな場所、知りたいなぁ」
「学校ですかね。磯貝さんに会えますし」
「そ、そっか……」
至極当然のことのように答えると磯貝さんの頬が赤く染まった。恥ずかしそうに髪と手で顔を隠す。
その仕草も何度も見てきた。
最初の頃は見れなかった照れ隠し。
つまりは、最初のことは俺の告白に何も感じていなかったということ。
いつからだっけな。俺の告白に彼女が恥ずかしがる素振りを見せるようになったのは。
俺のこと、意識してくれてるのかな。
彼女と過ごした昼休みの最初の5分。
その積み重ねで彼女のことをたくさん知った。
彼女も俺のことを知ってもらえた気がする。
「卒業、したくないですね。もっとこの時間が続けばいいのに」
最後まで彼女と過ごすのは昼休みの最初の5分だけだった。
一度くらい、一緒にお昼ご飯を食べてみたかったし、どこか遊びに行ったりしたかったし、勉強を教えてもらったりしたかった。
どれもこれも適わなかった3年間。それでも俺は不満があるわけじゃない。ただ俺にくれた5分間の積み重ねが嬉しい。
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