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「今日も好きです! 俺と付き合ってください!」
「……ありがとう。まさか3年間告白してくれるとは思わなかった」
今日の磯貝さんは、いつもより元気がないように見えた。
物憂げな顔も愛おしい。
胸が苦しくなって、今すぐにでも抱きしめたい。
俺はそれをグッとこらえながら口を開く。
「本気ですから」
「目移り、しなかった? 昼休みの5分間だけ話すようなわたしなんかより、もっと長くいたクラスメイトがいたでしょう?」
「今年は磯貝さんとも同じクラスでしたし、目移りする暇がないほどあなたに目を奪われていましたから」
「……し、潮谷くん、本当になんというか……思ったこと言うね」
磯貝さんが真っ赤になって髪に隠れる。
相変わらず耳は隠せていない。そんなところも可愛くて好き。
「俺は、あなたがいてくれたから、この3年間学校が楽しみで仕方なかったです。1日の中のたった5分。俺に時間をくれてありがとうございました」
幸せだった。この上なく幸せだった。
卒業したらもう会えなくなるけど、でも、きっともう潮時なんだと思う。
彼女は最後まで俺の告白に首を縦に振ることはなかった。
それでもいい。
告白を聞いてくれて、自分のことを教えてくれて、少しでも俺を意識して興味を持ってもらえただけで、俺は最高に幸せ者だ。
「卒業してもあなたが好きです、磯貝さん」
もう、5分が経ちそうだ。
と言っても、今日は午前までだからそもそも今がお昼休みでもないのだけれど。
今日が終われば、もう卒業式の日まで学校に来ることはない。
1カ月ほどの休みに入る。
これが、最後の……。
「ラスト1回。……あと1回。待ってるね」
意味ありげな笑みとその言葉を残して、磯貝さんは去って行った。マフラーの下で髪を揺らしながら歩いていくその姿が、やけに眩しかった。
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