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「今日もきれいな髪ですね! 好きです、俺と付き合ってください!」
「ありがとう。でもごめんなさい」
好きで言ってるだけなのだけれど、彼女を褒めると嬉しそうに頬を赤らめて微笑んでくれる。
それがまたたまらなく可愛くてやめられない。
もっとその顔を見せて欲しい。だけど他の人には見せないで欲しい。俺だけに見せて欲しい。
なんて、彼氏でもないくせに独占欲が止まらない。
「じゃあ、そろそろ戻るね」
ただの習慣としてのひと時が終わっただけのように、彼女は教室に戻って行こうとした。
「あ、あの!」
俺がその背中を初めて呼び止めたのは、入学して1カ月が経った頃だった。
足を止めてくれた磯貝さんは、風に流されないように艶やかな髪を抑えながら振り返った。
その仕草だけで見惚れてしまうほど、俺は彼女にゾッコンだった。
「なぁに?」
小首を傾げる彼女に、思わず「可愛い、好きです」と零してしまう。
「今日2回目の告白ってこと?」
「あ、や、その、そうではなくて! あ、いや好きですけど、今のは思ったことが口に出ただけと言いますか……!」
俺は慌てて弁明する。まるで言い訳をしているみたいになってしまった。
取り乱す俺の姿に、磯貝さんがクスッと口元を抑えて笑った。それだけで好きが溢れそうになった。心臓が痛くて、顔に熱が集まるのが自分でも分かった。
「他に言いたいことがあったの?」
頭がパンクしていた俺に、磯貝さんが柔らかい声で話を促してくれた。
俺は必要以上の大げさな動きで首を縦に振った。
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