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「ポニーテルは珍しいですね、可愛いです! 付き合ってください!」
「今日は暑いからねぇ。でもごめんなさい」
「今日は好きな本を教えてください!」
「好きな本……。実はわたし、文字を読むのはちょっと苦手で。あ、漫画とかなら読むんだけど。それでもいいかな?」
磯貝さんの苦手なことまで知れるだなんて、今日はついているかもしれない。
「体操服も素敵です! 運動会頑張ってください! 付き合ってください!」
「敵チームなのに応援ありがとう。でもごめんなさい」
「今日は好きな飲み物を教えてください!」
「紅茶かな。レモンティーが好きなの。今日の水筒の中身もレモンティーなんだよ、ふふ」
はちまきをヘアバンドのようにしている磯貝さんが可愛くて見惚れて、うっかり話を聞きもらしそうになった。
好きな人の話は一言一句覚えていたい。
「試験勉強頑張ってください! 好きです、付き合ってください!」
「ありがとう、頑張るね。それはそれとしてごめんなさい」
「好きな科目はありますか?」
「うーん。好きな科目、かぁ。好きなのは……数学?」
俺は理数系は苦手だから、単純に尊敬する。
いいな、磯貝さんに勉強を教えてもらいたい。
雨の日も、晴れの日も、曇りの日も、磯貝さんは俺の告白を聞いてくれて、「ごめんなさい」と返事をくれて、好きなものを教えてくれる。
ときどき苦手なものも教えてくれる。
その時間がたまらなく嬉しくて、もっと一緒に話していたくなる。
だけどどれだけ彼女と話をしたくても、彼女だって昼休みに過ごしたい友人がいるだろう。そう思うと、やっぱり5分以上の時間をもらう気にはなれなかった。
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