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「夏なのに今日も肌が白くておきれいです! 好きです、付き合ってください!」
「日焼け対策頑張ったからね。ありがとう。……でも……ごめん、なさい」
夏休み明け一発目の磯貝さんの「ごめんなさい」は、とても歯切れが悪かった。
いままではもっとサラッとスマートな「ごめんなさい」だったのに。
どうしたのかと、俯く彼女の顔を覗き込もうとした。
だけどその前に彼女は勢いよく顔を上げた。
まつげが長くてきれいな上向き……じゃなくて。
彼女は何かを決意したような表情をしていた。
「ねぇ、潮谷くん!」
まさか名前を憶えてくれているとは思わず、俺はぽかんと口を開けて目を見開いた間抜け顔で固まってしまった。
2回目の告白の時、俺は遅ればせながら自己紹介をした。名前と所属クラスと出身中学を伝えただけだけれども。
それ以来、彼女から名前を呼ばれることもなかったから、てっきり忘れられているものだと思っていた。
初めて名前を呼ばれたと認識した途端、心臓が急激に暴れ始め、顔だけじゃなくて体中に熱が巡った。
「潮谷くん? 大丈夫?」
「あ、はい、はい! 潮谷です! 大丈夫です!」
磯貝さんの心配そうな顔が近づき、咄嗟に身を引いてしまった。変に思われただろうか。
「あ、あの、その……」
「ふふ、焦りすぎ。名前、呼んだだけだよ、ふふ」
「そ、それだけでも嬉しかったんです!」
「そんなに? ふふ。あ、それでね、潮谷くん」
「は、はいっ!」
もう一度名前を呼ばれ、俺は背筋を伸ばしてピンと伸ばした指先を太ももの横にピッタリとくっつける。
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