瑠璃色のピアス

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 それから三日。早瀬は依頼人のいる街にいた。都心から電車で一時間ほどのところにある、海辺の街だ。どこにいても潮風の香りがする。  「帰ってくるなよ」と所長に睨み付けられたから、早瀬はいっそのこと、宿を取って出張にしてしまったのだ。完遂するまでは帰らないぞという意志の表れであり、職を失う前の最後の旅行のつもりでもあった。早瀬は背水の陣でこの仕事に臨んでいた。  さて、そんな早瀬に舞い込んだ依頼は実に単純なものだった。「なくしたピアスを探してほしい。おそらく近所にあるはずだが、自分は仕事で海外に行ってしまうから代わりに探してくれないか」。そんな内容である。人やペットに比べると自ら動くことはないから尾行に失敗することはないが、砂浜から一粒の砂金を見つけるようなものだ。単純だが、難しい依頼である。  しかし、全く手掛かりがなかったわけではない。依頼人の足取りを辿って入ったとあるバーのマスターが、そのピアスを見たというのだ。そのときはまだピアスは耳に着いていたが、依頼人は相当酒に酔っていたらしい。酒に溺れてうっかり失くしたのかもしれない。  それだったら街を歩いていれば見つかりそうで助かるんだけどな。早瀬は浜辺で一人、ため息をついた。依頼人は「海風に当たってくる」とバーを出たらしい。酒酔いの言葉は信用ならないが、手掛かりがそれしかないのだ。早瀬は依頼人の行動を追って、海辺で一人夜風に当たっていた。
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