2.王室からの依頼※

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 今は低い位置で緩く纏められただけのブルネットのカイルの髪が、ユーリの肩に降り注いだ。髪と同じ色の瞳に見つめられて、繊細な部分に触れられた余韻を残したユーリの体は、無意識に期待を抱いて強張った。 「おまえとユリウスに何があったっていうんだ? なぜ俺がそれを知らない」  いつもは王族を呼び捨てするなと言うのに、カイルは今ユリウスへの敬称を忘れているようだ。多分、今のカイルの頭には王太子ではなく、少年期に共に過ごした旧友として、ユリウスの姿が浮かんでいる。 「僕が、ユリウスに頼まれた届け物……うまく届けられなかったから」 「届け物?」  ユーリの言葉に、カイルは「なんだそんなことか」と表情を緩めた。 「その届け物が何か知らないが、そんなことくらいで、ユリウスはおまえに怒っているのか?」  言いながら、カイルは片手でユーリのズボンと下着を足から抜いた。  下半身だけ何も纏わずに、ユーリはカイルの体を間に挟んで脚を広げる姿になる。 「怒ってないよ、ユリウスは、僕に、怒ったりしない」 「そうだよな、ユリウスは鷹揚なやつだし、ことさらおまえには甘かった」 「んっ……あっん……!」  ぐいと腰を引き寄せられ、押し当てられたカイルの性器が、ユーリの後孔のヒダを開いて内壁をゆっくりと滑るように掻き分けた。その感覚に、ユーリは思わず声をあげ、力んだせいでピンと伸びた自分のふわふわ尻尾を抱き寄せた。 「カイルっ……そこっ……んっ……ぁっ!」  ユーリの中にあるすぐに気持ちよくなってしまうところ。カイルはそこをわざとらしくくすぐるように、でも確信は突かないまま、ユーリの中で性器を揺り動かしている。 「だから、罪滅ぼしだなんて、ユリウスは望んでないはずだ。おまえはそんなこと考えなくていい」 「んっ……で、でもっ……あっ……んんっ……」 「どうした、ちゃんと喋れ」  カイルは揶揄うように笑いながら、汗の浮かんだユーリの額にちゅっと音を鳴らして口付けた。その優しい仕草とは裏腹に、内部の性器は容赦なく内壁を刺激し続けている。  ユーリの中にじわじわと快感が積み重なり、更に求めて誘い込むように、孔が勝手にカイルの性器を締め付けて収縮を繰り返していた。 「ぁぁっ! カイル、カイルっんっ……気持ちいっ……あっ……んんっ」 「ここだろ? もっといっぱい突いてやるから、ほら掴まんな」 「あっ……! カイルッ……!」  ユーリは昂る感覚の解放を求めて、カイルの首に腕を回してしがみついた。  カイルはいっそう激しく体を揺らし、カイルの性器の先端がユーリの一番気持ちいいところを、的確に何度も引っ掻いた。 「カイル、あ、あのねっ……んっそれだけ……じゃなくてっ……」 「あっ?」  身も心も快楽に委ねようとする流れを止めたからなのか、カイルは少々苛立たしげな荒い呼吸のままユーリの言葉の続きを促した。 「僕っ……んぁっ……王都に行きたい……星祭に行ってみたいし……ユリウスにもっ……んんっ……あ、会いたっ……あっ……ああぅ!」  首に回していたユーリの腕をカイルが掴んだ。両手首をシーツに押さえつけられ、もう少し深く、カイルの性器がユーリの中を埋めていく。 「誰に教わったんだ?」 「んっ……ぁっあっ……!」 「ベッドでねだるなんて狡いやつだな、おまえは」 「とりあえず、んっ……来るだけでもいいって……言ってたし……ぁっ……」 「まあ、そうだが……」  カイルは吐息を漏らすユーリの唇に口付けた。「俺はおまえが心配なんだ」とカイルは言う。  ユーリのことをとても大切にしているみたいなその仕草と言葉に、ユーリの胸元はぎゅうと締め付けられていった。  カイルはユーリの亜麻色の髪が好き、透き通るような青い瞳と、陶器のような白い肌が好き。  ユリウスにそっくりなユーリのこの顔が好き。  カイルはユリウスにそっくりだからユーリのことが好き。  カイルはユリウス王子が好き。  ユーリはずっとそれを知っている。  だからユーリは自分がユリウスにそっくりで、本当に良かったと思っているのだ。  ユリウスに似ているということはユーリにとってはとても大切なこと。そのことがカイルや、他の誰かの役に立つならユーリはとても嬉しい。  だから、ユーリは王都に行きたいのだ。ユリウスの力になりたいし、カイルとユリウスを会わせてあげたいと思う。  ユーリが昔、届けなかったもの。  それはユリウスからカイルへの手紙だ。ユーリはその手紙の中身を見てしまった。そこに書かれていた言葉から、ユーリはユリウスの気持ちを知った。ユリウスもカイルのことが好きなのだ。 「あっ……カイル……きもちっ……イっちゃう!」  カイルは笑って「いいよ、いこう」とユーリの耳元で囁いた。  それが「王都へ」と言う意味なのか、「絶頂を迎えよう」と言う意味なのかハッキリと判断できないまま、ユーリは体の中で弾けた快楽の渦に身を委ね、白濁を溢れさせた。
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