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初恋は、あっけなく崩れた。
しばらく失恋で落ち込んでいたが、友達が春休みにショッピングに誘ってくれたおかげで気分も少し戻ってきた。
「琴美~、内海くんのことは忘れなよ~」
「そうそう! 琴美ならもっといい人見つかるって!」
「ありがとう……」
近くのショップでアイスティーを飲みながら、琴美は友達の言葉に慰められていた。
好きな子にフラれても平等に四月はやってくる。
新しいクラスでは内海くんと離れたが、それで良かったと思っている。
このまま同じクラスになったら気まずい。
「今日からよろしくね」
隣の女子生徒に、そう言葉をかけた。
彼女が、はにかみながらうなずいた。
一年の時と一緒だった子とも相変わらず親しくなり、隣の子ともちょくちょく話をするようになった。
いつしか失恋の痛みは消え、リップの残り回数だけが心に残った。
そして、その日。
あと1回。
あと1回、リップを塗れば、リップはもう使えなくなる。
あれだけにょっきりしていたリップ部分は、大根おろしみたいに先っちょだけが残っている。
リップを塗って、学校へ行く。
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