プロローグ

1/1
前へ
/74ページ
次へ

プロローグ

 夕空が、夜を連れて来るのが早くなった。  耳を塞ぎたくなるほどにうるさかった蝉の鳴く聲が、今はもう、しない。  みんな、死んでしまったのだろうか?  蝉の命は短い。長い間土の中で過ごして、ようやく表の世界へと飛び出して来たのに、たったの七日しか生きることができないんだ。  なのに、ただ毎日、ひたすらに鳴いて、鳴いて。  楽しいことはあるのか?  悔しい思いはするのか?  嬉しい、悲しい。そんな気持ちを持てるようなエピソードを、この七日間のうちに体験出来るのだろうか?  人生をギュッと凝縮されて、何に感動していいのかもわからないまま、尽きる命。  可哀想だ。そう思っていた。  だけど、その限られた時間を、誰よりも一生懸命生き抜くことが大事なんだと、君は教えてくれた気がする。 407ca838-93a8-469d-9601-1f1cd5c96487
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加