無法地帯(剣と仮面のサーガ)

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 剣士が感心したことに、ヤマガミは手にした密輸品のうち麻薬のような中毒性のある物はすべて処分していた。 「どうして自分たちで使わないんだ? 売ったら相当な金になるぞ」と、剣士はヤマガミに尋ねたことがある。 「こんなもの精神を壊すだけだぜ。俺様はイカれた人間が大嫌いなんだ」  とヤマガミは吐き捨てるように言った。  剣士が山砦の生活に馴染んだころ、山麓の村が襲われているとの報が入った。  ヤマガミが手下を引き連れて助けに向かうと言う。  剣士もヤマガミと並んで馬に乗り、現地に向かった。  山賊たちの幹部クラスは馬に乗っていたが、ほとんどの連中は徒歩だった。  必然的に前後の間隔がかなり開いてしまう。  救援に向かう途中で逃げてきた村人に様子を聞くと、襲撃者のなかにバルマン本人がいるという。  であるならば、バルマン党の本隊に違いない。  馬で先行しているヤマガミたちは数の上では不利かもしれない。  それを承知で道を急いだ。  村に着いたときには、夕闇が迫ろうとしていた。  バルマンたちは村の一軒一軒に押し入り、家のなかを荒らしまわっていた。  人の姿を見れば、情け容赦なく凶器を振う。  血の海という表現が大げさでないほどの惨状が目の前に広がっていた。  ヤマガミたちが到着したのを見て、バルマン党が防御の陣を敷いた。  さすがにバルマン直々が率いる本隊だけあって、統率力が高い。  結果的にここがヤマガミとバルマンの、本人同士が相見る初めての場となった。  両陣にらみ合いが続くなか、バルマンの陣からひとりの(おとこ)が出てきた。
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