無法地帯(剣と仮面のサーガ)

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 三日目の朝、街道の遠くで土煙のあがるのが見えた。  ウトゥが護衛隊たちを率いて駆けつけてきたのだ。  剣士の視線の先では、バルマンがまだ砦の麓で陣幕を張って、戦況を眺めている。  剣士は護衛隊が近づくタイミングを見計らい、もう一段退いた。  これで防壁も最後だった。  もうすぐ砦を落とせると思ったバルマン勢は一気に駈け上がってきた。  結果的にバルマン勢は本隊だけが取り残されたかたちになった。  そこへ、ウトゥらの護衛隊が三隊にわかれて斬り込んだ。  頭目を狙う護衛隊に、バルマンの本隊が最期の抵抗を見せた。  ウトゥは相手の斬撃をいなしつつ、突き返す。  攻守一体の剣技が、押し寄せる敵をつぎつぎに倒していった。  ウトゥの鬼神にも似た働きに、バルマンは逃げる機会を失った。  眼前に迫るウトゥの姿に気づいたバルマンが、手にした剣を抜いたとき、自分の両腕が空中に飛んでいくのが見えた――。  バルマンは自分の腕が斬られた瞬間、均衡(バランス)を崩して地面に倒れた。  からだからどんどん血が失われていく。  バルマンは地面に仰向けになった。  目の前には、青い空が広がっていた。  ――やっと解放された気分だ。  そういえば、はるか昔――自分の両親を殺して家を飛び出したとき、寝転がった大地で、同じような解放感に浸っていた。  あのときも青い空が広がっていたのを思い出す。  ――結局俺は何に抗っていたんだ?  空が消えて、自分を見下ろすウトゥの姿が見えた。 「もう……終わりにしてくれや……」  そのつぶやきに、ウトゥは頷いてくれたようだった。  その頃、剣士の合図とともにヤマガミ側は最後の防壁から熱湯を流して巨石を転がし、バルマン勢を大混乱に陥れた。  そこへ逆落としを仕掛ける。  バルマンを討ち取った護衛隊との挟み撃ちになって、バルマン勢は壊滅した。  
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