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「それでな、ヤマガミの奴は、同じように襲撃を受けた村人を集めて、山に上がり砦を造ったんだ。それで街道を往来する連中が『ヤマガミ党』と呼び出した。ただな、山砦周辺の村々から食糧をもらう替わりに、それらの村々の治安を守っている。根はいい奴だよ」
「お前はヤマガミの味方か?」
「いや、時々、俺の護衛する隊商を襲ってくるので、うっとうしい相手だが、バルマンほどイカれた連中じゃないから、まだ可愛いってもんだ」
「あの辺りは時々バルマンみたいな連中が湧いて出るな」
「ああ、でもヤマガミ党ができてから、野盗の類はずいぶん減ったね。やはり山砦を構える者の強みかな」
ウトゥの話を聞いて、ヤマガミ党ができる前、あの辺りで大規模な野盗の掃討作戦が行われたことを思い出していた。そのときは軍隊を派遣して一掃したというが、頭目を取り逃がしたとイカルは聴いていた。
「判った。何とかしようと言いたいが、退治するとなると付近の駐屯軍を派遣することになる。状況が把握しきれていないから、一度この目で見てみておきたい」
「こっちとしては、安心して移動できる街道にしてくれたら、それでいいんだ。協力は惜しまないから遠慮なく言ってくれ」
「ありがとう。また連絡するよ」
二人はその後しばらく雑談していたが、ウトゥが帰り、イカルひとりになると、難しい顔をしてしばらく考え込んだ。
「ヤマガミか……やはり、一度会ってみたいな……」
呟くようにいうと、身支度を始めた。
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