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二週間後、交易街道を経済都市のロウライから湾岸都市のウマイツに向かう一人の剣士の姿があった。
俯き加減に歩みを進める剣士は、廻国修行の身なりをしており、遠目からでもかなりの手練れに見えた。
剣士の前に、お手本のような怪しい連中が現れた。
「おい、ここを通るなら、ちょっと挨拶をしてもらおうか」
剣士が目を上げると、狼を思わせる敏捷そうな体つきの男が、短槍を手に立っていた。
剣と短槍では、間合いが槍の方が遠い分、剣には不利だ。
その後ろには二十人ばかり手下のような連中がいたが、狼男が手を上げると、訓練された動きで剣士を取り囲んだ。
いまの状況は、どうみても剣士の分が悪い。
しかし、剣士は取り囲まれても動じる様子はなく、口の端に笑みを浮かべると、「おいおい、ここは天下の往来だぜ、お前たちの私道じゃないんだ。何の挨拶がいる? お前ら、見た目どおりに頭が悪いんじゃないか?」と、わざと相手を怒らせるような口調で言った。
案の定、周りを取り囲んだ連中は、首領格の狼男の指示を待つこともなく、剣士に襲い掛かった。
剣士は足を引いて攻撃をかわすと、首筋に手刀を入れて剣を奪い取っていた。
そのまま、流れるように動き、剣を煌めかせながら周囲をすり抜けていく。
剣士の動きに翻弄された敵は、自らの動きで混乱し、次々と倒された。
さすがに狼男はつぎの動きをよんで、剣士の背後から短槍を突き出した。
剣士はその動きも織り込み済みだった。剣で背を守るように振り被ると、短槍の突きを剣の側面で受け流し、転身ざま剣を旋回させた。
剣先が狼男の顔面を撫でた。
「――っ!」
狼男が短槍を取り落とし、顔面を両手で覆った。
手の隙間から血がしたたり落ちる。
「誰も死んじゃいないよ。お前には、ヤマガミの所まで案内してもらう」
狼男は舌打ちすると、仕方なく剣士を山砦に案内した。
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