財宝が眠る山

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しばらく歩くと、今度はどこからともなく不気味なうめき声が…。 これが鈴木の言っていた幽霊の声か。 バカバカしい、正体を確かめてやる。 反響していてわかりづらいが、耳を研ぎ澄ませば聞こえてくる方向がわかる。 恐る恐るそっと近づき、知れば何のことはなかった。 原因は岩壁に形成された風穴だ。 温度差によって生じる対流の音が人のうめき声に似ていただけ。 鈴木のやつ、こんなのに怖気づいたのか、と笑いが込み上げた。 次に待ち受けていたのが最大の難所。 切り立った崖が立ちはだかっていたのだ。 ここから先は霧が立ち込めて見通しが悪い。 迂回はできそうもなく、この崖を登るしかなさそうだ。 命綱をつけて安全を確保し、ゆっくりと登った。 途中、手に赤黒い液体がつき、それがまだ固まっていない血のように見えた。 血だとして、固まっていないということは最近誰か登ったのか? 訝しく思いつつも、ようやく山頂にたどり着いた。 そこには大木が一本と、大きな岩がごろごろあった。 ここからが本番だ。 『燃ゆる目高く影落とす刻に闇の入口現る』の謎を解かなければならない。 「燃ゆる目」、しかも「高く」って…? 山頂からは夕日を眺めていて、ヤマトは気づいた。 「燃ゆる目」とは「太陽」、つまり、太陽が高い位置にある時だ。 そうなると、翌日の正午まで待つしかない。 夜をしのぎ、昼間になって影が入口を示すのを待った。 正午きっかり、霧が晴れ、木の影がひとつの岩を覆った。 謎解きはこの岩を指し示しているのだ。 半信半疑で大岩を力いっぱい押してみた。 それは少しずつずらすことができ、その後ろには空洞が現れた。 洞窟の中をライトで照らし、暗闇を進んでいくと―。 最奥部でボロボロに錆びた箱。 発見に歓喜した後、いざ、重い箱のふたを持ち上げる。 そこには、木の札が一枚あるだけだった。 「はるばる来て、これだけかよ」 思い切り落ち込むが、ないものはないのだ。 しかし、ヤマトはこのピンチにニヤリと笑った。 そんなこともあろうかと、ちゃんと準備していたのだ。 色とりどりのガラス玉を取り出し、先ほどの箱に収める。 それから動画の撮影を開始した。 「見つけた! すごい、こんなにお宝が!」 ガラス玉を両手に抱えて、興奮した様子のヤマト。 これで本物の財宝を見つけたように見えるはずだ。 よし、陽が落ちる前に下山しよう。 家に帰ってうまく編集をして…。 タイトルは『ヤマト、財宝が眠る山でお宝発見』かな。 出来上がった動画を想像しながら、急いで山を下りた。
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