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「わかった、引き受けるよ」と、ヤマトは決意した。
鈴木は喜び、「もし宝が見つかったら、全部君のものでいいよ」とまで言う。
まぁいいや、たとえ見つからなくても損ということはない。
ネタが当たれば、人気を取り戻せるんだ。
「受け継いだ地図って…?」
早速やる気を見せると、鈴木は地図を画像にして送信した。
筆のタッチで描かれた簡単なもので、頂上には×印が記されていた。
宝の在りかを示しているのだろう。
加えて、『燃ゆる目高く影落とす刻に闇の入口現る』と謎解きのような文章。
鈴木が「わかる?」と尋ねると、ヤマトは「まあ、なんとなく」と強がった。
本当はさっぱりだったが、現地に行けばなんとかなると楽観的に考えた。
かくして―。
電車とバスを乗り継ぎ、なんとか目的の村に到着した。
昔話に出てきそうな田園風景の向こうに神秘的な山がそびえている。
山肌は鬱蒼とした木々に覆われ、上の方は霧がかかって不気味な雰囲気だ。
登山口に到着すると装備を確認。
スマホに自撮り棒を付けて、撮影を始める。
「ホウフク山の登山口です」と紹介していたところで声を掛けられた。
人が良さそうな年配の男で、村の駐在所の警官のようだ。
「君、この山は勝手に登っちゃいけないよ?」と指さす方向には―。
赤い文字で『関係者以外立ち入り禁止』の看板がある。
「登ってくれって頼まれたんです、鈴木壮太くんに」
愛想笑いを浮かべるヤマトに警官は目を細めた。
「へえ、鈴木の爺さんちの孫にか? だったら、かまわねえが。ただ、気を付けるんだよ…ここにはその…」
「祟りがあるんでしょ?」と、ヤマトは笑顔で手を振って出発したのだった。
澄んだ空気に鳥のさえずり、木々が風に揺れるのを感じる。
足元の石や木の根を巧みにかわし、険しい山道を難なく軽やかに歩いた。
もちろん、要所要所で動画の撮影も忘れない。
やがて、古びた石碑が並ぶ開けた場所に出た。
十字架の形をした木材がいくつも地面に突き刺さっているのが奇妙だ。
そこで突然、何かにつまづく。
それは泥にまみれた白く丸い物体だった。
…人間の頭蓋骨に見える。
思わず叫んで、尻もちをついたまま後ずさりした。
待てよ、ここはきっと墓地だ。
昔は土葬が一般的で、骨が自然に地表に出てきたんだろう。
そう自分を納得させ、急いでその場を離れたのだった。
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