いつの間に終わるの、夏。

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「お父ちゃん。」 「んー?」 「今まで帰って来なくてごめんね。」 「おう。」 「なんか、夏って短いよね。気がついたら終わってた。」 「そっか。それじゃあ、しょうがないかー。はははー。」 テキ屋は、18歳で柚葉の親になった。テキ屋は今、41歳。22歳の柚葉と話している雰囲気は、昔見た2人から少し大人になって、友だちって感じがする。 「カイトにやってよ。」 テキ屋が柚葉に渡したのは、ちゅーる。 「お父ちゃん、やること昔と変わってない。」 「えー?」 「あー、でも。シニア用か。」 「そうなんだよ、こんなちっこくて俺よりジジイだもんな。」 テキ屋に目元を撫でられた。ぼんやりしている視界をはっきりさせられた気分だ。 「カイトー。柚葉がご飯くれるってよー。食べー。」 花火の前にちゅーるをもらえるのもいつもの夏。でも、柚葉からもらえる事は最近では特別だ。 柚葉が搾り出すちゅーるを少しずつ舐めとる。うまい。いつもより、うまい。 初めて食べたカツオ節みたいに、無我夢中で口に入れた。
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