いつの間に終わるの、夏。

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「夏が終わるなー。」 テキ屋がノンアルコールビールを飲みながらぼんやり呟いた。 尺玉が夜空に向かって流れ星みたいに尾をひいて駆け上がり球型に花を咲かせた。 周りから「おおー!」って、拍手しながら花火を喜ぶ声が聞こえる。 「きれいだなー、カイトー。」 テキ屋の顔は少し寂しげ。柚葉と一緒に見たかったのだろう。 『今年最後の花火は吉田煙火店のスターマインです。』 テキ屋にとって我が子と一緒にいられる最後の夏。なのに花火は柚葉とこの夏いちども一緒に見られなかった。 縦に横に花火は広がって夜空を彩った。破裂するたび空気が揺れていた。 「アイツは、いつの間にやら大人になったんだな。」 テキ屋が俺の体を撫でながらしみじみこぼした。 「さあてとー、片付けるかー。」
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