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結局、眠ることなく大学の最寄り駅に到着した。日曜の21時過ぎ、小さな駅の周辺は閑散としていた。皆、大学周辺で一人暮らしをしているので、駅前の広場で解散になる。次の活動日時を伝えたあと、後輩達が挨拶をして次々と帰っていく。
「理子ちゃん!」
私も美保と二人で帰ろうとした時、後ろから声をかけられた。振り返ると、岩崎先輩が近づいてくるのが見えた。広場には街灯があるものの、薄暗くて先輩の表情はハッキリとわからない。
「岩崎先輩……どうかしましたか?」
「あの…………」
珍しく先輩が言い淀み少し視線を彷徨わせた。不思議に思い、首を傾げていると、意を決したように私を真っ直ぐに見つめてきた。
「俺とワルツを踊ってくれないか?」
そう言いながら、先輩は左手を差し出してきた。
「え?」
訳が分からず固まっていると、横にいた美保が私の手から荷物を奪い取って背中を押した。
「ほらっ! ぼ~っとしてないで手をとって!」
「えっ!? あぁ…………うん」
慌てて先輩の左手に右手を重ねる。4、5歩ほど歩いたところで先輩と向かい合った。先輩の左手ぎ上げられたので、ホールドを組むと、予備歩からステップが始まった。
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