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2 養父母は見世物にする
俺をこの家に連れてきたオコンネルの養父母はそれに無関心だった。
特に養母は実家に帰ってきた、ということで、常に近場の友のところへ遊びに出ていた。
そして時折その友達のところへ俺だけを連れていき。
「弟のところで育てられなくなった子を引き取ったんですのよ」
と紹介した。
俺はその都度、教え込まされた挨拶をひたすらに暗唱した。
すると彼女の友達は、
「まあ、何って賢い子」
「いい跡取りができたわね」
などと言って褒めそやした。
養母はそれで鼻高々になって帰って行くのだ。
「……ネイリアもトラディアも本当にいつも連れて行くには恥ずかしかったわ」
「そうだな、此奴はその点、お前の弟の血を引いて頭だけは良さそうだからな」
帰りの馬車の中で、そんな会話を当時はあまり意味もわからず聞いていた。
一方、従姉達からの嫌がらせは続いていた。
森に置き去りにされることが確かにあと二回あった。
だがその前に、彼女達からよく殴る蹴るの暴行を受けていた。
この歳では、男子より女子の成長の方が早い。
いくら女の子だと言っても、ほんの小さなガキを転がして、その上からはたいたり蹴ったりするくらいは簡単にできるのだ。
俺はよく屋敷の裏、祖父母の部屋からは遠い場所の陰にある砂利の上に突き倒され転がされ、馬乗りされては腹や腕を殴られた。
従姉達はこういうところだけは子供ながらに狡猾だった。
見えない場所を徹底的に痛めつけるのだ。
ただ彼女達は両親が言うように、全体的には「頭は良くない」。
俺の世話をするメイドには自分では付けられない場所にあざを作ってくることを不審がられた。
そして森に置き去りにされること三度目、とうとう俺は祖父母に従姉達に連れていかれた、と答えた。
置き去りにされた、とは言わない。
あくまで「連れてこられた」だ。
すると祖父母は彼女達を問い詰める。
小さい子供の手を離すとは何ってことだ、何でそういうことをするんだ、と。
そしてそれが三回目になることにも祖父母はようやく気付く。
それまでのメイドの注進と相まって、俺が彼女達から暴力を伴った嫌がらせを受けていることに気付くのだ。
そして祖父は養母に言った。
「エルダ、しばらくはこの家にアルゲートを連れてきてはいかん。儂が許可するまでな」
「ええっ、どうしてですか。せっかく自慢できる息子ができたというのに……」
成る程、と親父譲りに「頭だけは賢い」俺はその時気付いた。
養父母は俺を飾りにしようとしているのだな、と。
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