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アントニアがゴットフリートからのプレゼントの包みを開けると、そこには美しいガラスペンが入っていた。軸にピンク色の花びらが散っているかのような模様が付いていてとても美しい。アントニアはゴットフリートに会えなかったのは残念だったけどとても嬉しくて、この時のプレゼントを大人になった今でも大事に持っている。
「わぁ、すごく綺麗! ゴットフリートにお礼の手紙書くね!」
「気に入ってくれてよかった。兄上も喜ぶと思う。色は兄上の指定だけど、模様は僕も選んだんだ」
実際にはラルフがペンを選んだと聞いてアントニアは一瞬残念に思ったが、手配してくれたゴットフリートの気持ちは嬉しかった。この時、レアがアントニアを睨んでいたのだが、プレゼントに夢中になっていたアントニアは気が付かなかった。
「これ、僕からのプレゼント。ペンに合わせた色にしたんだ。兄上にお礼書く時に使って」
「レターセットも素敵! ありがとう!」
ラルフは兄からのプレゼントに合わせてピンク色の地に花柄模様が付いたレターセットを贈ってくれた。レアは造花のブローチと髪飾りのセットを贈ってくれたが、パーティの間、終始不機嫌そうだった。
それ以来、アントニアがレアの前でラルフと話したりすると、あからさまに焼きもちを焼くようになった。それでゴットフリートの年に2回の帰省時以外、アントニアは彼の実家ノスティツ家から足が遠のくようになったが、ゴットフリートがこのことを知ったのはずっと後のことだった。このことで後にレアは、アントニアとゴットフリートに罪悪感を覚え、2人の再会と復縁に尽力することになる。
悲劇が起きたのは、アントニアが16歳、ゴットフリートが18歳目前の時。後2年経てばアントニアが18歳になり、2人が結婚できるという時だった。
アントニアももう小さな子供じゃなかったから、ゴットフリートの家が祖父の先代侯爵の死後、経済的にまずい状態になりつつあるらしいのは聞き知っていた。でもまさか借金で領地を売らなくてはならなくなるほどとは思わなかった。領地を売った罰としてノスティツ侯爵は子爵に降爵した上で引退し、長男のゴットフリートに爵位を譲らなければならなくなった。
ノスティツ家はゴットフリートとラルフ兄弟の寄宿学校の学費も払えなくなり、2人は退学を余儀なくされた。借金問題が表面化する1年前からノスティツ家は既に寄宿学校の学費を払っておらず、学校にはそれ以上の猶予をもらえなかった。でもその1年間、兄弟が学校で支払いのことで肩身の狭い思いをしないように学校が配慮してくれただけでもありがたいと思わなければならないだろう。
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