32.レアのお節介

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 レアは、夫の親戚が辺境伯家に勤めているので、アントニアの離婚の経緯を知った。アントニアが2人目以降の子供を望めないので離縁したいと辺境伯アルブレヒトが国王ヴィルヘルム4世と教会に願い出て許され、1年前に離婚して聖グィネヴィア修道院にいるという。 「ねえ、ゴットフリートは今でもアントニアのことを想ってる?」 「うーん……兄上は何も言わないからなぁ……あの歳まで結婚していないのも俺と同じで家の事情だったと思う」 「アントニアにゴットフリートと再婚を考えられないかって聞いてみたの。そしたら自分は初婚のゴットフリートに相応しくないからそんな事は考えられないって返事が来たわ。でも『相応しくないから』ってことは、相応しいんだったら再婚したいってことよね?」 「ええ?! そうかな? ちょっと飛躍しすぎじゃない?」 「あの子は大人しいから遠慮してるんだと思う。だから前夫にもあんな目にあわされたのよ」  レアが親戚から聞いたアルブレヒトのアントニアへの仕打ちを語ると、ラルフはアントニアに同情した。 「ねえ、ゴットフリートの気持ちを聞いてくれない? もし彼がその気なら、私達が2人の仲を取り持ちましょうよ」  レアはテーブルの上に乗り出してやる気満々でラルフに話を持ち掛けた。ラルフは彼女のあまりの勢いに戸惑ってしまった。 「え、まぁ、兄にその気があるのならやぶさかではないけど……どうしてそこまでするの?」 「ゴットフリートが寄宿学校に入った後、私、ちょっとアントニアに……ツンツンしてたわよね……もうちょっと仲良くできたらよかったって今でも後悔してるの」 「ああ、アントニアが俺と話すと君が焼きもち焼いてたこと?」 「ちょ、ちょっと! 黒歴史なんだから、はっきり言わないで! 今は旦那様命なんだから!」 「い゛、痛っ!」  レアにバシンと肩を叩かれ、ラルフは叫んだ。 「とにかくゴットフリートの気持ちを確かめてね」 「わかったよ」  ラルフがゴットフリートにアントニアと縁を結ぶ気があるかどうか聞くことになり、2人はカフェを出て解散した。
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