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33.弟の心配
レアとカフェで話してから数日後、ラルフは妻ゾフィーのぎこちない態度を心配しながらも王都郊外に移った実家へ向かった。
実家に着いたラルフの顔を見た途端、母カタリナは欲しい物をねだった。
「ラルフ、いらっしゃい。今日は頼んでたジュエリーを持ってきてくれたの?」
「そんな訳ないでしょ。ゴットフリートがこの家の前当主夫人に相応しい程度のドレスとアクセサリーを用意してるでしょう?」
「ゴットフリートはケチ過ぎて1シーズンに2着しか買ってくれないの!しかもレベルが落ちる仕立て屋のドレスよ!私はコーブルク公爵令嬢だったのよ。息子の貴方も次期コーブルク公爵なのよ!こんなみすぼらしいドレスとアクセサリーじゃ社交に励めないわよ!」
「何十年前の公爵令嬢ね。誰も母上に社交を期待してないから大丈夫。それより兄上に話があるからもう行くね」
「ちょっと! ラルフ! この親不孝者!」
「子不孝って言葉はないのかなぁ……」
激昂した母カタリナが背後でギャーギャー喚いている中、ラルフは聞かない振りをして独り言で愚痴を言いながらゴットフリートの部屋へ向かった。
「兄上、ちょっと話したいんだけど時間ある?」
「ああ、あるよ。何?」
「アントニアが去年離婚して今は聖グィネヴィア修道院にいるって知ってる?」
「あ……あ……そ、そうなの?!」
ゴットフリートはアントニアの名前が出た途端、ラルフから視線を外して挙動不審になった。
「兄上は彼女と結婚する気ある? もしあるなら俺達も協力するよ」
「け、け、結婚?! ア、アントニアと?! でも彼女とは……もう10年も前にうちの没落で縁は切れたんだ。彼女の両親が俺と再婚するなんて許さないだろう?」
「彼女は修道院にいるから、再婚に両親の許しはいらないだろう?」
「そんな訳にはいかないよ。それに俺はもう結婚はいいよ」
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