35.強情なゴットフリート

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 ラルフが神託節にゾフィーと3人で聖グィネヴィア修道院へ行こうと誘うと、ゴットフリートは案の定渋った。 「ラルフ、俺のことを心配してくれるのはありがたいけど、せっかくの神託節だ。ミハエルと家族3人で水入らずで過ごしなよ」 「兄上、ありがとう。でもミハエルはまだ赤ん坊だ。今回一緒に神託節を祝わなくても覚えてないよ。でも来年からは家族3人で過ごすから、今回が3人で聖グィネヴィア修道院に行く最後のチャンスなんだよ」 「でも今更どんな顔してアントニアに会えって言うんだよ……」 「彼女は絶対兄上のことをまだ好きだよ。直接会って話してみて」 「そんなはずないよ。婚約してたのはもう10年以上も前なんだから」 「とにかく会ってみようよ。俺達も一緒に行くからさ。仕事だって休暇中だからいいじゃないか」 「でも……」  ラルフは結局兄を説得できなかった。それでも出発する日に勝手に迎えに行くことにした。  出発当日の朝、ラルフとゾフィーがゴットフリートを馬車で迎えに行くと、彼はまだ髪の毛がボサボサで普段着を着ており、外出するような恰好ではなかった。 「兄上! 迎えに来たよ!……え? 何その恰好?! 早く着替えて!」 「い、行かないよ!」  ゴットフリートは強情に足を踏ん張って腕を引っ張られても梃子でも動かなかった。1時間以上、ラルフは兄を説得しようと努力した。すると普段昼まで寝ている母カタリナが騒動を嗅ぎつけ、神託節にかこつけてラルフに高価な宝石とドレスを強請ろうとしてノスティツ子爵家の小さな家はカオスに陥った。  そうこうしているうちに昼になってしまった。聖グィネヴィア修道院は普通の行程なら王都から1泊しないと着けない距離にあり、ゾフィーを連れていく以上、ラルフは夜中に馬車を走らせるのは避けたいと思っていた。 「兄上、残念だよ。俺達は日暮れ前に宿に着きたいから、もう出発しなきゃいけない。うちの馬車を置いていくから、後からでもいいから来て。御者にはちゃんと言い含めてるけど、くれぐれも父上と母上に馬車を使わせないようにね」
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