フランソワーズ

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「あの人形、お母さん怖いのよ。青い目がリアルで特に嫌。美樹はすごく気に入っていたみたいだから、我慢してたけど。もうオルゴールも鳴らないんでしょ? 顔だってカピカピでひび割れてるし、洋服だって色褪せてボロボロよ」 「ああ、おふくろの人形か…………たしかにあの人形、怖いよな」  母親の言葉に父親はうんうんと大きく頷いた。 「そうかなー。怖いかなー。綺麗な顔してるなぁって思ったんだけどなー」  美樹は小声でボソボソ言いながら、バゲットをちぎり、口に入れる。 「美樹の感性はおふくろ似だな」 「まぁ、お義母さんが大事にしてた物だし、燃えないゴミに出すのもねぇ……人形供養?っていうのしてもらいましょうか? お寺とか神社とかでやってるでしょう?」  人形を処分する具体的な話になり、美樹は浮かない顔をした。 「……ねぇ、ここに置いてもらうの……ダメ……かな?」 「嫌よ」  上目遣いでおずおずとお願いしてみたものの、間髪入れず無慈悲な返事が飛んでくる。 「じゃあ、新居に持っていきなさい」 「うーん、新居(うち)狭いから……できるだけ余計なものは持ってくるのやめようって、和彦さんとも話し合ったし……」  処分なんてかわいそうとは思いつつも、新居に持っていかない以上、母親の決定に文句は言えない。 「じゃあ、供養して処分して貰うわよ。いいわね!」 「……うん」  語気を強めた母親の勢いに、美樹は渋々ながら小さく頷いた。
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