5 肉野菜餡掛け炒めと山盛りご飯

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5 肉野菜餡掛け炒めと山盛りご飯

「これより、大食い企画が始まります。どうぞ中央広場にお集まりください」  商店街に放送が流れる。  会場で準備していたみのりは不安に押し潰されそうだった。  特大中華鍋の肉野菜餡掛け炒めに火を入れる。  中華とも和風とも言えない、いい香りが辺りに漂う。  香りにつられたせいもあるのか、思っていたよりも多くの人が集まり、あっという間に人だかりとなった。 「始まりました、大食い企画。ここで企画の説明をいたします。この大食い企画はどこまで美味しく食べられるか、を競う物です。無理をして極限まで食べる競技ではありません。美味しく食べて、美味しくご馳走様をする。その美味しい表情(かお)と食べた量を競うものです。途中退席、苦しそうな表情で食べる、箸が止まるなどした時点で失格となります」   司会によって、大会の注意事項が始まった。 「ここで参加者を紹介いたします。ゼッケン番号1番、星霜(せいそう)大学二年、小玉凛桜さん。ゼッケン番号2番、星霜大学ニ年、傘立歩夢くん。ゼッケン番号3番、星霜大学三年、早川 和也(はやかわ かずや)くん、ゼッケン番号4番、商店街の大食いホープ、やき肉、肉政大将、三河 政吉(みかわ まさきち)、ゼッケン番号5番、星霜大学柔道部顧問、館林 真司(たてばやし しんじ)先生〜〜! 勝負はこの5人で対戦だぁ!!!」  参加者の名前を聞いて、みのりは料理する手が一瞬止まった。  あの子たち……。今日は姿を見ないなぁ、と思ったら!  選手になっていたとは!  驚いたものの、みのりはすぐさま料理を盛り付けに入った。大皿に野菜あんかけ炒めを山に盛る。丼茶碗には、山のようにもった炊きたて白米。  どちらからも湯気が立ち上っている。  5人の前に、山盛りの野菜あんかけ炒めと白米の丼茶碗が置かれた。   「飯処みかさ特製肉野菜餡掛け炒め定食です! なお、みかさ店主みのりさんのご厚意で卓上調味料が用意されております! 胡椒、ラー油、お酢、マヨネーズ、七味唐辛子 お好みで味変にお使いください!」  参加者たちの顔がほころぶ。  皆、山盛りの野菜炒めとご飯はものともしないようだ。いい香りにつられて、早く食べたい顔になっている。  そこへ大きな声で野次が飛んだ。 「おいおい、野菜いためと白米? 大会なのに随分しょぼいな。もっとステーキとか唐揚げとか、ラーメンや寿司のほうが盛り上がるんじゃねぇのか? 定食屋なんかに任せないでさ!」  みのりは唇を噛み締めた。  たくさん食べるなら身体に良いものがいいかな、野菜がとれたらいいかな。  中華丼のようだけど野菜炒め感が強く、食感も楽しめるもの。  色々と考えた上のメニューだけど……やっぱり地味だよね。  これが定食屋の限界か。  いや、定食屋と言うより自分の料理の限界だ。  俯いたみのりに一際大きい声が響いた。   「これから私たちが食べる姿を見てから言ってくださいっ!」  司会者からマイクを受け取って壇上で話しているのは、たまちゃんだった。  人前で話すことが苦手だと言っていたが、はっきりと話している。 「私たちは、毎日でもみのりさんのご飯が食べたいです。飽きないし、身体の事を思ってくれて。そして何よりご飯が進む味つけなんです。どれだけ美味しく食べているか、見てもらえたら。絶っ対に分かります!」  そう言うとたまちゃんはマイクを司会者に返した。  壇上の競技者たちから拍手が起こる。  そうして。  司会者の合図の元、大食い企画が始まった。
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