1・唐突なお誘い

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 興奮してまくし立てるわたしに、支社長は、実にさりげなく一言投げかけた。  「ああ、週末全部潰したりしたら、彼氏に叱られちゃうのか」  あまりのさりげなさに、わたしはその言葉を深く吟味することなく、即座に答えていた。  「いえ、彼氏はいないので、その心配は……」  あっ。  言ってから、しまったと思った。  そうだよ。  彼氏がいるのに恋人のフリなんて無理です、って言って、断ればよかった。  そうしたら穏便に済ませられたのに。  どうして、そのことに先に気づかなかったんだろう。  そんなわたしの落胆が、彼にはお見通しだったらしい。  「恋人いるって言っとけばよかった、って思っただろう? 今」  図星だ。  「な、なんでわかるんですか。もしかして、支社長は人の心が読める異能者だったりするんですか」  また支社長はぷっと吹き出す。  「誕生会といい、異能者といい、真面目な顔して発想がとっぴだな、木谷は。いや、そんな能力は持ち合わせてないよ。でも、木谷の気持ちは手に取るようにわかる。全部、表情や態度に現れるから。まあ、だからこそ、安心できるんだけど」  「安心?」  なんでまた、そんなワードがここで登場してくるんだろう。
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