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毎夜の床入り
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時は、寧々子と竜規の初夜に遡る。
寧々子は寝間着をまとったまま布団の上で仰向けになり、すっかり固まっていた。その様子はまるで化粧箱にしまわれた日本人形のようである。
「身を捧げると決心したからには、後には引けません。さあどうぞ」
「覚悟を決めたところで申し訳ないが、余はおぬしと夜伽をするつもりなど毛頭ない」
「それでは何故、わたくしのところにおいでになったのですか?」
竜規はきょとんとする寧々子の隣にあぐらをかき、半身をかがめて耳元でささやいた。
「余の手足となってほしいのだ」
「どういう意味でございましょうか?」
寧々子は身を起こして膝を正し、竜規と向き合った。行燈の光に照らされた無垢な顔には、疑念と興味が入り混じっている。
「余の子らが皆、早世しているのは承知しているであろう?」
「はい。呪いのせいだと聞いています。心中をお察し申し上げます」
「では問うが、おぬしは呪いというものを信じるか」
「いいえ。呪いなどがあれば、将軍様は皆、とっくに死んでいるに違いありませんから」
竜規は的を射た答えに、いささか驚嘆の顔をした。
「さようであろうな。では、なぜ呪いについて尋ねたか、余の意図を汲めるか?」
寧々子は、目を細めてためらいなく答える。
「竜規様は、子らの死の理由が誰かの所業だとお考えなのでしょう」
「そうだ。察しが良いな」
竜規の漆黒の双眸が輝きを増す。
「ということは、わたくしに咎人を探させようと?」
「そういうことだ。なぜならおぬしはこの御殿で唯一、潔白な者だからな」
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