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「そのような理由でわたくしを側室にされたのですね。腑に落ちました」
「おぬしは肝が据わっておるだけでなく、賢さも持ち合わせておるようだな」
「お褒めにあずかり嬉しゅうございます」
「しかし子らがいない今、どうやって咎人を突き止めるか……」
竜規は顎に手を当てて深く思案するが、良い手立てが浮かばない様子である。すると突然、寧々子の表情が光を帯びた。
「竜規様、わたくしに良い考えがあります。咎人が誰か、突き止める方法を思いつきました」
「なんと、それはまことか!?」
「ですが、うまく立ち回るためには御殿の者のことも、竜規様のお子さまのことも知らねばなりません。ですから毎夜、わたくしと床入りして頂けませんか?」
「ははっ、夜伽のふりをして策略を立てるということか」
「さようでございます」
行燈の光が寧々子の瞳を妖しく光らせる。けれど竜規もまた、寧々子の立言に胸を躍らせていた。
「よかろう。おぬしのひらめきに余もかけてみるとするか」
以来、ふたりは夜な夜な語り合い、時にとりとめのない話も交えつつ、細部まで策略を練り固めていった。
そしてすべての準備が整った頃、寧々子は竜規との床入りを最後にした。なぜなら寧々子は子をもうけたふりをする必要があったからだ。
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