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しかし『うちでも手に追い切れない案件だ』
と、大柄でオールバックの男が唐突に告げてきた。
自宅の部屋へと、壁を抜けて出現した、黒い作務衣を着た男に。
「どうしてだよ!悪さをする亡霊や妖怪をどうにかするための
機関なんじゃないのかよ!」
「七紅は七空の家の先祖に守られている。それが妨害してくるんだ」
「先祖が......?」
「七紅が家を取り込んだんじゃない。家が七紅を取り込んだんだ。
七紅を神のように崇めたとき、受け入れてしまったんだよ。
妖怪にまで進化できたのも、先祖の想いの強さだ。
母親が無意識に百日紅の木を植えたのも、先祖がそうさせた」
「そんな......ただ、七空という名前になっただけなのに
ときに貧しくて苦しくて、助けてくれた猿に感謝しただけなのに。
猿たちは猿たちで、ただ、百日紅で遊びたいだけなのに......」
すべて、すべてが、そのとき、そのときに、生きようとしただけだ。
人も獣も。
何が間違っていたというのだ!
「しかも猿だけあって悪知恵がはたらき、すばしっこい。
プロの我々でも追い切れんのだが......。
放っておくつもりもない。我々も突破口は探っている」
男のその声が聞こえるか聞こえないかの勢いで俺は泣き叫んだ。
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