第二部 七空村

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「兄さん、みて、可愛いでしょ!」 藤生が、真っ白なネコを抱いて駆け寄ってきた。 仔猫ほどではないが、まだ生まれて間もない子供くらいにみえる。   俺は食事をほとんど取らず、自宅のベッドに寝ていた。 それは父も同じで、父はストレスで胃を壊して内科へと入院した。  中谷さんには、藤生のことで悲しませたくなくて......。 会社が倒産しかけていて大変なのだと嘘をついて、家政婦の仕事は 辞めてもらった。  母は、普通の会話ができるほどには落ち着いていたが、退院させるには 不安のある状態だった。 とてもじゃないけど藤生のことは話せなかった。 もう、動けるものはほとんどいない......これからどうする? そんな絶望のなかで寝ている俺の顔へと。 藤生が猫の顔を近づけてきた。 「綺麗だ......」 まるで職人が丹精込めて磨き上げた宝石のように。 青と緑の目をした猫だった。
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