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秋になり、舞う枯れ葉に埋もれながら七紅が寝ている。
「あのまま焚火にして燃やすことはできないかな」
なごやかな夕暮れ時、縁側に藤生と並んで座って。
俺は物騒なことを口にした。
「無理だよ。7匹が合体したから命も7つぶん強いんだ。
普通に何をしても通用しないよ」
アオメを撫でながら藤生が冷静に言ってきた。
俺たちは元から太らない体質だったけど、さすがに入退院を繰り返す
藤生は、細くなりすぎていて、生活にも少し支障が出始めていた。
精神科ですべて世話をしてもらえる母とは別に、父の入院には
それなりの雑用も必要で、中谷さん以外の家政婦さんを探して
数人を交代制で雇って、父の入院先にも出向いてもらっている。
両親が2人とも入院していても、弟までが命に係わる病魔に
襲われても、猫を飼いながら自宅で生活できるのは、結局は
家の財力だった。
父にはやはり感謝すべき点は多かったのだ。
もちろん俺が不登校なので、福祉課の人も中学校の担任も
訪問してきた。
「弟と一緒にいられる時間は、もうかぎられてます。
勉強はこれからでもやり直せるけど、
藤生と遊べるのはいまだけなんです。おねがいします。
いまだけは、好きにさせてください」
そのままの事実と本心を告げたら。
涙ながらに不登校を黙認してくれることになった。
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