第二部 七空村

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「兄さんが寝てばかりだったあいだに、 七紅とたくさん話したんだよ。 取り込むといっても殺すわけじゃなくて、 意識はあるって知れて、ホッとしたよ」 「おまえ、それで......そんなに明るくいられるのか?」 「うん、でも、やっぱり僕だって恐かったから......。 どうしても兄さんの代わりになるって、それだけは言えなかった。 ごめんね。でもね、いまはこれで良いんだと思えてる。 ガンが進行して苦しんで死ぬより、七紅のなかで生きられるから」 「良くないよ、何も、良くないよ......」 ずっと藤生だけ自由なことを妬んでいたのに。 いまは、藤生の決心が悲しい。 そんな俺を慰めるかのように。 アオメが藤生の腕から抜け出して、俺の膝へときた。 とても、とても、温かい、小さなぬくもりと、想い。 「猫がこんなになつくのは珍しいんだよ。 特に兄さんのほうが好きみたいだ。 兄さんからの愛でアオメも、妖怪とか、 能力をもてるかもしれないよ」 「嫌だよ、アオメはアオメのままがいいよ」 俺はアオメを抱きしめた。 七紅の下品ないびきとは違って、アオメの鳴く声は愛しく聞こえた。 短い秋が過ぎ、冬の兆しが見え始めた頃。 両親が、ほぼ同時期に退院した。 やっと家族4人が揃ったが、その喜びは束の間だった。
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