1人が本棚に入れています
本棚に追加
「七紅、七紅!僕を、僕を取り込め!いますぐに......!」
急に激しく動いた藤生が、庭に倒れ込みながら、息を切らしながら。
それでも叫んだ。
俺はそんな藤生のそばにしゃがんで肩を抱いた。
「でないと、七空家がなくなるぞ、
また......百日紅が枯れるんだぞ......」
百日紅の脅しが効いたのか、夜には庭にいない七紅が出現した。
「おいおいおい、なんだ後ろの危なっかしいのは」
七紅が呑気な声を出し、爪で頭を掻いた。
紅色の毛並みよりも燃えるような怒りの形相で父が刀を構えている。
「七紅、僕は、僕は......もう長くない。
どのみちもうすぐ取り込まれるつもりだった。
だけど、いま、父さんに殺されたら......おまえ、は、
八つに、な、れ......なく......」
「なに?藤生が、どうしたっていうの?」
母が動揺したが説明している余裕は無かった。
「藤生、もう喋るな!七紅!父さんはどうして急にこうなったんだ?
これは呪いか!どうなんだ!答えろっ!」
「なに?藤生が長くないってどういうこと?
病気が長引いてるだけだって言ったじゃない!」
母が父からの攻撃も怯えて声を震わせた。
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい黙れ!
みんな死んで静かになればいいんだ!」
七紅が片腕で地面を激しく叩き、地鳴りがした。
その衝撃で誰もが静止した。
最初のコメントを投稿しよう!