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あのクリスマスイヴの夜。
父が刀を持ち出したときの、白にネコ柄のトレーナーとジーンズを
そのまま着ていて、それを暑いと感じるほど、部屋の窓から漏れる
日差しは、確かに春めいていた。
「眞麗、おまえは眠っていたんだよ、ほんとうに冬から春まで。
さあ中学二年、14歳になったぞ」
目の前には、金色の和服を身に纏った紅色の猿がいた。
7匹の小さな猿から、ひとつの大猿になり、和装した猿になった。
ほんとうに藤生を取り込んで『八』になり、神になれたのだ。
それでも尻尾自体は7本のままだった。
「おまえには普通の生活をさせてやること。
そして親は生かしておくこと。
藤生が願ったことは叶えてやったんだ。
おまえ、オイラを呪うだのって言うけど、オイラは素直なんだぞ。
藤生と一緒に生きるんだから、仲良くやってくつもりだ」
「それで......どうして春になってるんだ?」
俺は部屋の窓を開けてみた。
遠くにあるシダレザクラの花びらが。
風に運ばれて、舞いこんでくる......。
何年も何年も見慣れた春の景色がそこにあった。
「あれこれやるのに時間がかかったからだ。
やれやれ、神も大変だな。いや、人間が大変なんだな。
とにかく全部どうにかした。見せてやるよ」
七紅が歩き出したので、仕方なく着いていくことにした。
猿として姿勢が前かがみだったのに、神になったせいか?
真っすぐに立って歩いていた。
そうして屋敷内の両親の寝室へと連れて行かれた。
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