第二部 七空村

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そこには......。 父と母が、ダブルベッドで花柄の布団の中で寄り添って眠っていた。 とても、安らかな美しい顔で。 クリスマスのあのときの服装のままで。 父は茶色のタートルネックのセーターで。 母はグリーンのワンピースで。 「これ、死んでるのか?」 俺は生死を確認する勇気がなくて......寝室にさえも入れなかった。 「眠っているだけだ。そして、この室内だけ時間が止まっている。 そういう空間を作り上げた。おまえの親はこのまま眠り続ける。 年も取らずにな」 俺は身体の力が抜けて、障子を背にしてゆっくりと床に座り込んだ。 和風作りの家だけど中身は洋風で床はフローリングで、客間だけが 畳になっている。 「おいおい、障子は壊すなよ。 この入り口のおかげで2人は眠っていられるんだ」 「そんなの、死んでるのと同じじゃないか。 ただの人形じゃないか......!」 「藤生の願いを叶えるには、これしか思いつかなかった。 何がいけない?目を覚ませば悲しむぞ、苦しむぞ? それくらいはオイラにもわかる。 なにしろ藤生は、どのみち死ぬ運命だった。 母親にはそれが最も酷だろ?しかも親父と別れたがっていた。 嫌になっていた、憎んでいた。親父は親父で、嫌になっていた。 起きればまた暴れるぞ。眠っていれば静かな夫婦だ」 それはそうか......と、ぼんやりと俺は思った。 「それと、あとひとつ」 七紅が我に返る言葉を放ってきた。
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