第二部 七空村

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確かに神になった七紅の力は偉大だった。   俺が普通の中学二年として再生活して、そのまま生きていけるように 『世界』に組み込まれていたのだ。 たぶん、それを構築するのに冬から春までかかったのだろう。 設定としては.....。 『七空村』というものが存在していて、俺はその村の長の長男として 生まれたので、実家を継ぐことになっていた。 しかし跡取りを嫌がり、弟にすべてを譲ることを条件として絶縁した。 義務教育の中学を卒業するまでは実家に住まわされるが、高校からは 家を出て七空家とは、すべての関わりを持たずに生きていく。 その後の生活自体は保証されるので莫大な金が与えられる。   町の人々はそれを認識していたし、戸籍も家の権利書も父の口座も 健在だった。 俺が身分証明をするために必要な、父の肩書まで偽造されていた。   七紅の世話になって生きるのは抵抗もあったが......。 俺はそれに従った。 藤生が命がけで助けてくれた命だ。 それを粗末にはできないと決意したからだ。 とりあえず義務教育の中学生のあいだは、家政婦の世話になり 両親と弟は架空の本家に住んでいることになっている。 もちろん両親の眠る寝室は『無いもの』として、七紅は家政婦の 意識を押して操作していた。
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