第二部 七空村

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しかし俺は、結婚して2ヶ月で妻に裏切られ、殺されかけた。 彼女は『長男としての跡継ぎを捨てる代わりにもらう高額な金』 それを目当てに、近づいただけで、愛なんて無かったのた。 「はあああっ?三千万?たったの!三千万円しかないの?」 金の価値なんて俺にはよくわかってなかった。 実家が一般人より、少し贅沢ができるという、そういうもの程度の 感覚だったし、七紅からもらった金を派手に使うような気はなくて それでも少し高額なマンションで過ごし、結婚してからは、もっと 広くて高級なマンションへと引っ越した。 その14階のマンションから、酒で酔ったせい......と、見せかけて 俺を殺して、妻として財を貰う計画をしていたのだ。 妻は......俺が洋酒しか飲めない、他の酒は苦手だと。 それを把握していなかった。 いや、元から興味がなかったのだろう。 だからビールを飲めと言われても頑なに断った。 そのせいでキレて本音をぶちまけた。 「金が無いなら殺す価値もないわよ!馬鹿馬鹿しい!」 あぁ、どうせ俺は馬鹿だよ。 その馬鹿さを、もっと自覚させられた。 仕事から帰宅したら......買い替えた高価な家財道具をすべて 持ち出されていた。 そこには、俺が自分で選んだ安物のソファーだけが置かれていた。 その後、弁護士を通して、彼女と対面しないまま離婚が成立した。 あらゆる感情が喉元まで込み上げて。 トイレに駆け込んで胃酸で喉が焼けるほど吐いた。 俺は、いつもこうだ。 目の前にある事柄に振り回されるだけだ。 藤生が命を助けてくれた。 七紅が金だけはくれた。 ただ、それだけだ。 まっとうに生きれる場所が無い。 どこにもない......。
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