第二部 七空村

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俺は無意識にベランダへと出た。 カーテンを高く吹き飛ばすほどの風が吹いている。 このまま風に乗って飛んだら、きっと俺も飛べる。 どこかに行ける。 いや、どこかじゃない、もうどこにも行きたくない、生きたくない。 しかし、それができなかった。 アオメが......ベランダの柵の上に立ち、両手を広げていた。 『飛び降りなんてさせない!』 そういう意識と、そういう目をして、そして泣いていた。 強く吹く風に耐えて髪を揺らしながらも小さな身体を踏ん張って。 俺はベランダにしゃがみこんだ。 わりと冷静に近所から苦情がきそうだと思いながら。 それでも泣き続けた。 「もういいよ、もうなにもかも、どうでもいいんだよ! 好きにさせろよ!いつもいつもいつもいつも、俺は選ばれる! 長男だから後を継げとか、妖怪に取り込まれろとか、 金持ちの旦那になれとか!そしていつも見捨てられる! そんなの、もう嫌だ......もういやなんだよおおおおおお!!」 それでもアオメは立ち続けた。 アオメの、青と緑の涙の雫が、風に舞っていた。 「綺麗だ......」 小児癌だと告げられてからの藤生が、連れてきたときのまま。 姿が変わってもアオメは美しい。 それでも。 俺の死んでしまいたい願望は消えなかった。 七空から奪った三千万円で細々とした生活をしながら 死ぬ方法を考え続けた。 そうして自殺方法を詳細に書く王生さんのブログをみつけた。
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