第一部 闇から雨のち晴れ

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どのくらいの時間が経っただろう?歩くのに疲れて俺は立ち止まった。 もはや、女の俺に対する暴言の積み重ねでトンネルが埋まりそうだ。 舗装されていない壁は細い木の根が絡みつき、捕らわれた身の感覚を さらに増大させ、地面の土の湿り気で靴が汚れきっている。 なにをやっているんだ俺は......こんなに誹謗中傷されまくって。 さすがに自分が情けなくなってきた。 しかし、クリタは、クリタにとっては......深刻なことだ。 俺が放り出すわけにはいかない。 1週間前、事務所に来れたこと自体にはクリタは喜んでいた。 「落合さん、イケメンさんでビックリしちゃった。 でもね、やっぱり恋人がいちばん素敵に見えちゃうかなあ」 無邪気に惚気てきたほど、クリタは愛し愛されている。 ナチュラルで明るいネイルを付けた指もみせてくれた。 彼氏に似合うと言われた柄なのだと。 病魔を追い払えた彼女は幸せになれる筈なのに、それなのに。 また辛い状態になっているのだ。
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