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どのくらいの時間が経っただろう?歩くのに疲れて俺は立ち止まった。
もはや、女の俺に対する暴言の積み重ねでトンネルが埋まりそうだ。
舗装されていない壁は細い木の根が絡みつき、捕らわれた身の感覚を
さらに増大させ、地面の土の湿り気で靴が汚れきっている。
なにをやっているんだ俺は......こんなに誹謗中傷されまくって。
さすがに自分が情けなくなってきた。
しかし、クリタは、クリタにとっては......深刻なことだ。
俺が放り出すわけにはいかない。
1週間前、事務所に来れたこと自体にはクリタは喜んでいた。
「落合さん、イケメンさんでビックリしちゃった。
でもね、やっぱり恋人がいちばん素敵に見えちゃうかなあ」
無邪気に惚気てきたほど、クリタは愛し愛されている。
ナチュラルで明るいネイルを付けた指もみせてくれた。
彼氏に似合うと言われた柄なのだと。
病魔を追い払えた彼女は幸せになれる筈なのに、それなのに。
また辛い状態になっているのだ。
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