第二部 七空村

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『落合さーん、王生 (いくるみ) さんのブログが更新されてるよ』 『え、マジで?みにいってくる』 普段はクリタのやっているブログに、俺がコメントして やり取りしているが、ネットの通話機能も使用していた。 しかし、通話で声で語ったり、画面に顔を出したりはせずに 文字を書き出して、チャットのみにしていた。 あまり親密になるよりは距離間も必要だったのだ。 なにしろ互いに本気で死のうとしていたので。 そして『王生、行ってきます』というブログは、かなり人気があった。 自殺の名所、廃墟、心霊スポット、都市伝説、それらへと休日になると 独りで出かけて行く。 『なんていうか、頭のキレも鋭い感じだな。 危険な場所に行ってるけどモラルは守ってるし、 サイトの運営に通報されないようにギリギリのラインを 計算している。この人も、死にたいんだろうな。本気で』 『おっ、きました名探偵!本気って、なんでわかるの?』 『ネガティヴな発言をしないから』 『それだけ?』 『自殺するのを、止められたくないから。だと思う』 『なるほどねえ。確かに、あたしも健康的を装ってた』 『なんで、みんな自殺を止めようとするんだろうか? 本人が生きたくないって願って、苦しみから解放されたいのに』 『そうだね。ほっといてほしい。あ、落合さんと話すのは楽しい』 『クリタ、べつに気を遣わなくてもいいよ』 『ううん、ホントだよ。だって、止めようとはしてくれないから。 なんかね、ホッとするよ。受け止めてくれる感じで』 『俺は俺で、クリタと話すのは楽しいよ』 スムーズに書き込まれていくチャットが、一時的に止まった。 『クリタ?どうした?身体が辛いのか?』 『ごめん、ちょっと泣いてた』 『そっか、顔はみえないんだから歪むほど泣け』 『ねえ、落合さん』 『なんだ?』 『あたしたち、いつまで話せるのかな?』 今度は俺が泣きそうになった。 『いつまでだろうな、わかんねえや』
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